一季出版株式会社

2020.09.19
2020/9/19 2019年度ゴルフ場売買価格、前年度比較で23%アップ

2019年度(19年4月~2020年3月)に、ゴルフ場の価格(経営株売買額、事業譲渡額、法的整理でのスポンサー拠出額、競売等価額、不動産鑑定価額、売却希望価額、簿価等含む)が推定・判明できた国内のゴルフ場の価格は9コースのみだったが、その1コース平均価格はさらに跳ね上がったことがわかった。
この期間に20コース以上の経営交代があったが、売買の成立で価格が推定・判明できた9コースの平均は12億500万円で、前年度(21コース)の9億4731万円と比較すると、2億2500万円、率にして23%のアップとなった。

アコーディア・ゴルフを傘下に持つMBKパートナーズグループによるOGM39コースの大型契約があったのは2019年3月1日の経営交代で、本来なら2018年度だが、今回この買収価格が推定できたことから、その価格を含めた計48コースの平均価格は21億3021万円にさらに跳ね上がり、都市圏の人気コースの売買価格に近い価格となった。OGM39コースの1コース平均が23億円相当と見込まれるためだ。
ちなみに推計できた9コースのうち、売買価格が最も高かったのが千葉県の18ホールゴルフ場で推定40億円。立地の良い上場企業系列のパブリックゴルフ場だったことから近年でも高い値段が付いたとみられている。その他、値段を上げたのは昨年度では静岡県と群馬県のゴルフ場の計2カ所を買収したPGMグループで、その他の案件は1~8億円と10億円に到達せず、3億円前後が多かった。競売や破産、それに民事再生など法的整理での低額案件が少なかったためで、都市圏以外で行われている任意売買はやはり低額にとどまっているとみられる。

大手ゴルフ場企業グループには年間100コース近いゴルフ場売却案件が今でも持ち込まれるようだが、売買成立コース数は業界全体でも半数にも達しない。立地に恵まれないゴルフ場は買取価格が安くなりがちで、利幅の大きな収益改善を見込む大手グループは敬遠しがちで、結果的に立地の良いゴルフ場しか売買が成立しにくくなり、買い手と売り手の価格が乖離している。
それがここにきて新型コロナウイルスの影響で、変化が出てそうだ。
2020年3月以降は飲食業や観光業に限らず、マンションなどの不動産、ゴルフ場の売買も取引が少なく、市場が低迷している。今は大きな投資を控えている業種が多く、コロナ禍でしばらく低迷するのが明らかなことから、さらに市況が厳しくなる。
こうしたなか、グループ1位のアコーディア・ネクストゴルフグループは、トラストに分離させていた資産買取に動いた。最初に明らかになったのは昨年12月頃で、コロナ由来ではないが、昨年末の鑑定価格より評価が下がったところで、シンガポールに上場するアコーディア・ゴルフ・トラスト(AGT)が持つゴルフ場資産の買取提案を行っている。88コース(本紙では89コースとカウント)のAGT分を618億円で買い取るという。
市況の低迷でユニット商品価格が割安になっているとの判断で、プレミアムを付けて提案した。
様々な手法を使うファンドマネージャーがどういうエグジットを描いているのは不明だが、他の企業グループもコロナ禍の後で到来するであろう、経済の復興と不動産売買のチャンスをうかがっているに違いない。

ゴルフ場で流動しやすいのが一度、法的整理や売買、上位グループが手掛けたゴルフ場であり、近い将来の新たな売買に結びつきやすい。
コロナの影響で資金繰りが厳しくなる業種が増えていると予想されており、経営者が高齢化している飲食業などは廃業も増えている。ゴルフ業界も高齢化とゴルファーの減少という課題を抱えており、コロナ禍で経営改善が見込めないと判断されれば、売却や廃業を考えないといけなくなる。一時のメガソーラーのようにゴルフ場相場の倍以上で土地を買い取ってくれる業種は少なくなった。
いずれにしても延期された東京オリンピックが開催される2021年以降に、法的整理やゴルフ場売買が動き出しそうだ。新型コロナが思いのほか収束に期待できるのであれば外資系や大手グループに動きが出てくる可能性があり、一方で長期化するのであれば、その外資系も撤退を始めるかも知れない。

なお、売買事例の一覧は8月上旬に一季出版㈱から発行予定の「2020年ゴルフ場企業グループ&系列」(定価5000円=税別)に収録する。

関連記事:2019/7/11 H30年度ゴルフ場売買価格、前年度比較で30%アップ

※「ゴルフ特信」第6540号より一部抜粋

過去のお知らせ一覧はこちら