2026.09.21
2026/9/21 炭素税導入ならゴルフ事業に最大61億円のコスト増
ゴルフ場運営と遊技機製造を行う㈱平和(嶺井勝也代表取締役社長、東京都台東区東上野)は6月26日に関東財務局長宛てに提出した、第58期(2026年3月期)の有価証券報告書において、気候変動が事業に与える財務的影響をシナリオ分析の形で具体的に試算・開示した。日本では現時点で「炭素税」という名目の課税制度は導入されていないものの、国際エネルギー機関(IEA)が想定する脱炭素シナリオでは先進国に対して1トン当たり180ドルの炭素価格が課される前提が置かれており、同社はこれをゴルフ事業の温室効果ガス排出量に当てはめてリスク額を算定した。
試算の対象はゴルフ事業のScope1・2排出量で、2025年3月期実績の21万4827トンに炭素価格180ドル、2026年3月末の為替レート159・86円を乗じた結果、潜在的なコスト増加額は61億円にのぼるとしている。これは「炭素価格政策が厳格に導入された場合」の移行リスクであり、影響度は同社の評価基準で最大の「大」(営業利益への影響50億円以上)に分類されている。こうした炭素価格リスクは「1・5℃シナリオ」(2050年頃にカーボンニュートラルを目指し、政府による厳しい規制が施行される世界観)においてのみ顕在化するとされ、発現時期は中・長期(2年超以降)の時間軸で想定されている。
なぜゴルフ場が特に影響を受けるのか。各ゴルフ場のクラブハウスの照明や冷暖房・給湯、ゴルフカートの走行など、電力や重油等の化石燃料を大量に消費する施設特性があるためだ。炭素価格が電気・燃料代に転嫁されれば、電力や重油の調達コストが直接押し上げられる。全国に321コースを運営する平和グループにとって、この影響は1施設あたりのコスト増が積み重なれば無視できない規模になる。
対策の柱として同社が掲げるのは設備の電化と省エネ化だ。ガソリンカートから電動カートへの順次移行、重油ボイラーから高効率ボイラーへの切り替え、照明のLED化をすでに進めており、設備更新予算をこうした脱炭素投資と連動させている。また、サプライヤーへの炭素価格転嫁による調達コスト増についても「中」リスクと評価し、環境配慮型製品への移行と主要サプライヤーとのエンゲージメント強化を対応策に位置づけている。
同社グループのCO2排出量(Scope1・2合計)は直近4年間ほぼ横ばいの約10万トンで推移している。コロナ禍からの業績回復やゴルフ場の新規取得が削減効果を相殺してきた形で、さらにアコーディア・ゴルフのグループイン(2025年1月)により管理対象コースが大幅に拡大したことから、今後の連結ベースでの排出量削減計画の具体化が課題となる。
日本の炭素価格政策は現在「地球温暖化対策税」(炭素含有量に応じた燃料課税)にとどまっており水準は低いが、政府が脱炭素化を加速するなかで将来的な引き上げは避けられないとの見方が強い。平和グループによる今回の定量開示は、ゴルフ場業界が気候変動コストを「見えないリスク」ではなく経営上の実数として捉え始めた動きとして注目される。
